「治せないガン」と医者から宣告されたとき

医者から、「治せないがんです」と言われたら……。大切な人にしても、本人にしても、考えただけでも、ぞっとする話です。

「そんなことを言われたら、どんなふうに気持ちを支えて生きていけばいいんだろう」思う方も多いのではないでしょうか。

「それも運命なんだから仕方ない。受け入れていくさ」と思える強い人なら、問題はあまりないかもしれません。けれども、普通の人はそんなに簡単には割り切れないでしょう。

こんなとき、どんな考え方をしたら、少しは楽になれるのでしょうか。「奇跡はきっと起こる」「」んなに元気なんだもの、死ぬわけがない」「誰が何といっても、私はがんではない」と自分に言い聞かせるのもひとつの方法でしょう。

しかし、「いい聞かせてみても、やっぱり『言い訳しているだけに過ぎない』と思ってしまう」という方には、こんな考え方もあります。

そもそも、「がんを持っている日すぐ死んでしまう」と考えがちですが、がんがあるからといって、今すぐに命がなくなるわけではありません。

がんも塊としてあるだけなら、ただのコブに過ぎません。がんが怖いのは、無制限にどんどん増えて、大事な働きをしている臓器を潰して働かなくしてしまうことにあるのです。

言葉を換えれば、がんを抱えていても、今現在生きているのであれば、大事な臓器はまだまだ余力があるということです。

がんが治らないまでも、今の状態を保って、進行さえしなければ、生きていくことはできるわけです。ですから、まず、今生きていることに自信を持ちましょう。そして、「治す」より、ヨいくしない」ことに気をつけるようにするのです。

がんも、もともとは自分の体の中の一部です。体に負担がかかって、ちょっと反抗して不良化しただけ。だからちょっと非行に走った少年同様、あまり悪者扱いをしないで、真摯に向き合えば、種類にもよりますが、何年、十何年とがんを抱えたまま生きていくことや、場合によっては完治することも可能です。

現に今も、がんで膨らんでしまった大きなお腹を抱えて生きている人、大きな乳がんの塊を抱えて生きている人、肺にがんが転移しても生きている人はたくさんいます。今より悪くならなければ、少なくともがんで死ぬことはないのです。

「治らないがん」と言われたときには、考え方を切り換えて、がんとうまく共存していく生き方をすると、気持ちが楽になれるかもしれません。