「誰かの役に立ちたい」と病人は思っている
ご家族からすれば、患者さんには「早くよくなってもらいたい。そのためには、安静にして、しっかり病気と向き合ってもらわないと」と思うことが多いでしょう。
けれど、この「安静にして、しっかり病気と向き合う」というのは、患者さんにとって案外きついことです。
患者さんにしてみれば、1日中ベッドの上にいて、病気のことしか考えるな」と言われているのと同じ。そんな毎日を送っていたら、誰でも気持ちが滅入ってきますし、「おまえは病気なんだ」と悪い暗示をかけられているような気分にもなってしまいます。
さらに、長わずらいになってくると、「こんな体になっては、人に迷惑をかけるだけの存在。生きていたって仕方ない」と思われる方も少なくありません。
こういうときに、ただ漠然と「何いってるの。もっとつらい人もいるのよ、がんばって生きなさい」と励ましても、説得力はありません。生きている意味や生きがいを感じられないと、人は「生きる意欲」がなかなかわいてこないもの。「生きる意欲」がわいてこないと、元気にもなれません。
こんなときには、「生きがい」探しのお手伝いをしてみましょう。患者さんを病気一色の中に閉じ込めてしまうのではなく、体調の負担にならない程度の気分転換のイベント、仕事、運動などをすすめてみるのです。無茶な運動や仕事は体によくありませんが、適度な気分転換は「生きがい」探しの役に立ちます。
がんなどの重い病気や寝たきりの生活でも、工夫を凝らしてみると、案外いろいろなことができるものです。家庭での療養生活なら、ベッドの上に小さなテーブルを用意すれば料理の下ごしらえもできますし、子供の勉強をみてあげることもできるかもしれません。
「煮物の味つけがわからないの。材料はこれで、調味料はこれでいいんでしたよね」というように、何かと相談相手になってもらうのもいいことです。
そして、ちよつとした家の手伝いをしてもらったときには、「ありがとう。やっぱり、お母さんがいてくれると助かるわ」と声をかけましよう。
こんなときだからこそ、日頃は気恥ずかしくて言えないような、「あなたが入院して、あなたの存在のありがたみがわかったわ」なんて、感謝の気持ちを言葉にしてみるのもいいものです。
人は病気をしても、どこかで人の役に立つ存在であり続けたいと願います。「ベッドに寝たきりの私でも、家族の一員なんだ。病気をしている私でも、人の役に立てる大切な存在なんだ」と心の底から思えたとき、生きる希望があふれ出てきます。
「存在価値」や「生きがい」が感じられる闘病生活は免疫カアップにもつながります。