病人の「心の声」に耳を傾ける
問いかけに隠された真実を読み取る
「病人から『私はがんなの?』『私、死んでしまうの?』と間かれたら困るから、見舞いには行けない。話ができない」という話を、ご家族や近しい方からよく耳にします。
実は医者や看護師でも、同じような悩みを持っていてなかなか患者さんのそばに行けない者もいるのです。
「がんなの?」「死んでしまうの?」と聞かれたら、確かに、頭の中が真っ白になって、″どうしよう″という疑問符がグルグル駆け巡ってしまいますよね。
そして、たいがいは慌ててこんなふうに答えることが多いのではないでしょうか。
「何、バカなこと言ってるの!」
「先生はそんなこと言ってないでしょ―」
このような答え方で、たぶん一時的には患者さんも納得するかもしれませんが、そのうち心の中にモヤモヤがたまってくることになりやすいものです。
そのモヤモヤがいつしかどんどんたまっていって、ある日大爆発を起こすことにもなりかねません。では、病名に関する問いかけにはどう答えたらいいのでしょうか。
大切なのは、相手の心の奥底に隠された本当の気持ちに耳を傾けることです。患者さんはなぜ、あなたに「がんなの?」と尋ねてきたのでしょうか。
患者さんが「がんなの?」「死んでしまうの?」と聞いてきたとき、「はい、その通り」などと、まともに答えてほしい場合は、数えるほどです。
確かに、なかには「ちゃんと病名や余命を知りたい」と思って尋ねる人もいます。
しかし、多くの場合、「がんなのかしら?」という言葉の異側には、「どうして、こんなに具合が悪いんだろう」「なかなか治らなくてつらい」ヨ心い病気だから、退院できないのかも」「なぜ、こんな苦しい治療を受けなくちゃいけないの」などといういろいろな思いが隠れていることが多いものです。
実は患者さんは、その裏にある「つらい」「苦しい」といった気持ちに共感してもらいたいのです。