何でもない会話が実はいちばんほっとする


「でも、具体的にどんな話をすればいいのか……。病気の人にふさわしい話って、どんなものでしょう」

多くの患者さんは特別扱いされたり、同情されたりすることをいちばんいやがるようです。

そんなふうにされると、なんだか今までの自分と変わってしまったような、疎外されているような、見下されているような気持ちになるといいます。では、どんな会話をしたらいいでしょうか。もっとも無難なのはごく普通の日常会話です。

「されいなお花ね、誰か面会に来たの?」

「昨日の野球の結果はどうなったのかなあ」

「今日、ここへ来る途中でちょっとドジっちゃってさ。電車乗り過ごしちゃったよ」

ただ、意識するとうまく普通っていわれても、いつもどんな会話をしていただろう。かえって意識してしまう」と考え込んでしまうかもしれません。

そんなときは、「」く普通に」と意識した「普通」でもかまいません。そのうち、ちゃんといつも通りの会話ができるようになります。

少々配慮が必要なのは、病気そのものの話や仕事の話題です。病気の話は、みじんも聞きたくないという人と話したい人に分かれます。

仕事の話題も同じ。自分が社会に置き去りにされるのが怖くて会社の話をしたがる人、逆に仕事ができなくて焦ってしまうので聞きたくない人といろいろです。

とまあ、多少のポイントはあるものの、実はいちばんのコツは失敗を恐れずに何でもいいから話してみることです。「うまく対応しよう。失敗しないように話をしよう。

″心に添ったケア″を」と身構えると、かえって臆病になったり、緊張してぎこちなくなるんですね。

初めての経験は誰だって戸惑います。もちろん失敗もあります。「傷つけるつもりはなかったのに、あとで考えたら病人にいやな思いをさせたんじゃなかろうか」などということもあって当然。心のすれ違いは普通の人間関係にだってつきものです。

それよりも、失敗を恐れて、誰もお見舞いや介護に行かなくなることのほうが、患者さんにとってはもっと悲しいことです。病気だからといって臆せずに、普段通りのあなたで接してみてください。

▼がんだからといって特別な態度で接するのではなく、今まで通りの接し方でよい。
▼何気ない普通の会話がいちばんはっとする。