病人に対しての先入観は捨てること

病人に対しての先入観は捨てること

家族や親戚、あるいは親しい人が「がん」と診断を受けたとき、多くの方が、「これからその人とどう接していけばいいのか」という悩みを抱かれるといいます。

「がん患者さん」と聞くと、ほとんどの人はまず、「きっと、いつも病気のことで悩んでいて、想像を絶するような心と体の苦しみを抱えているに違いない。めったなことはいえないから、話をするにも気が抜けない」と思われるようです。

だから、お見舞いに行くにも気は重くなってしまうし、ましてや家族であれば、「病院にいるときの数時間だけならまだしも、丸一日顔を合わせるとなると、どんな話をしていったらいいのだろう」と退院が決まってからも不安になったりします。

でも、実際はそんなに心配する必要はありません。今までの日常生活にほんのちょっとの気配りをプラスすればいいのです。

確かに、重い病気をわずらうと誰しも気持ちは沈みがちになります。しかし、人間はひとつの気持ちをずっと同じテンションで持ち続けることはできません。

どんなに楽しい遊びも、毎日続けていると色あせて感じられてくるように、どんなに苦しくて大変な状況も、多少は慣れてくるときが来ます。

そして、どんなに不安で張り詰めた気持ちでいる人も、 一日の中には気の緩む瞬間が必ずあるものです。

がん患者さんも同じです。悩んでいる時間は当然あるけれども、普通に食事もするし、テレビも観るし、大笑いだってするのです。がん患者さんが四六時中病気のことを考えて深刻で、いつも体がつらいと思うのは「先入観」です。

多くの患者さんが口をそろえてこんなことを言われます。

「周囲の人が気をつかいすぎてつらそうな顔をしていたり、同情のまなざしで腫れ物に触るような態度をとったりするのが、いちばんつらい。病気にかかっても私は私で何ひとつ変わっていないのに。今までと同じように接してほしいのに」

がんは、体の病気です。

あなたの大切な人の心まで、病におかされるわけではないのです。がんがみつかったからといって、その日から特別な態度をとる必要はありません。その人が病気にかかる前と同じように接していけばいいのです。どうか先入観を捨てて、ごく当たり前に、普通に接してみようと考えてください。